【目的】大腸癌は種々の形態を示す単一腫瘍腺管で構成されている。従って個々の単一腫瘍腺管の分子レベルの異常を知ることは、大腸癌全体の腫瘍発生を理解する上でも重要である。そこで我々は大腸癌の単一腫瘍腺の分子レベルでの解析を行った。【方法】30例の大腸癌から腺管分離法を用いて単一腫瘍腺管を分離した。各々の症例から実体顕微鏡下に1腺管ずつ単一腫瘍腺管10腺管を回収しDNAを抽出した。回収した各10個の単一腺管で構成されるサンプル(単一腺管群)と、同一症例から30個の腫瘍腺管を回収しDNAを抽出したサンプル(代表群)との間で、それぞれ1p、5q、8p、17p、18q、22qのallelic imbalance(AI)及びMSIについて解析した。加えてp53遺伝子変異についても検索した。代表群においては、MINT1、MINT2、MINT31のメチル化をmethylation-specific PCR法を用いてCpG islands methylation phenotype(CIMP)の有無を検索した。【結果】全例において各単一腫瘍腺管の遺伝子解析が可能であった。25例において単一腺管群でみられた遺伝子異常は代表群で一致したが、5例は一致しなかった。単一腺管群の遺伝子異常の多様性がみられた症例は27例であった。【結語】1)各単一腺管には多彩な遺伝子異常がみられた。2)大腸癌における単一腫瘍腺管は多様な遺伝子異常で構成されていた。
|