研究概要 |
本研究の主目的は低悪性度B細胞性腫瘍のhigh-grade transformation (HT)機構をcomparative genomic hybridization (CGH)法による遺伝子発現プロファイリングによって検討することである。平成15年度は前年度に引き続いて、検討対象の収集と、CGH法の基礎となるfluorescent in situ hybridization (FISH)法による検討を行なうとともに少数例にたいしてCGH法を試みた。 前年度までの研究の結果、HT頻度の高い瀘胞性リンパ腫では、胚中心細胞のマーカーであるCD10またはBCL6が陰性の瀘胞性リンパ腫ではMUM1が陽性となり、かっこのような例では腫瘍細胞の増殖様式が他の例とは異なる傾向が免疫組織化学的に見出されていることを踏まえて、MUM1陽性群と陰性群でCGH法で染色体増幅の様式に差異があるかについて少数例を対象として検討したが有意な差異は認められなかった。 節外性MALTリンパ腫に特徴的とされるBCL10遺伝子を含む染色体転座をリンパ節病変2例に見出し、この様な異常が胚中心で生じることが示唆された。 第2回彩の国さいたま病理診断セミナーにおいて、病理解剖時の肉眼的観察の技法について講演した(2003年6月7日、大宮ラフレさいたま) 悪性胸水とinterfollocular involvementの著明な瀘胞性リンパ腫の例を経験し、その細胞学的所見について報告した(第42回日本臨床細胞学会秋季大会、2003年10月26日、横浜) 本研究の様な悪性腫瘍の遺伝子解析は、遺伝子疾患の遺伝子診断に比べて倫理的問題は生じにくいが、本研究では、試料提供者の人権を保護するために「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を順守し、病理解剖・病理診断を本来の目的とする標本採取の際の、研究趣旨の説明と同意を求める文書案を作成し、埼玉医科大学倫理委委員会の審議・承認を受けた。結果、病理解剖承諾書の改訂と病理解剖承諾の為の説明書,ならびに診断用病理検体に関する説明書および承諾書が同大学附属病院で使用されることとなった.
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