隆起した病的瘢痕を形成するケロイドではアポトーシス発現性について相反する結果が報告されておりその実態と意義の解明が急務とされている。そこで今回カスパーゼ3と2の陽性細胞数を計測すると肥厚性瘢痕とケロイドの群で正常瘢痕にくらべ有意な増加を示し、またTUNEL染色陽性アポトーシス細胞数は肥厚性瘢痕とケロイドの群で正常瘢痕にくらべ有意な増加傾向を示した。培養ケロイド線維芽細胞(KF)のアポトーシス誘導能は血清除去24時間目にKFでは正常線維芽細胞にくらべてアポトーシス細胞数の有意な増加が認められた。したがってケロイド線維芽細胞ではアポトーシス誘導能が高いことが示された。血清除去KFのアポトーシス誘導時におけるカスパーゼの活性化をELISAにて検索した。血清除去5時間目にはカスパーゼ3の活性化値がKFで正常線維芽細胞に比して4倍の増加を示し、カスパーゼ3阻害剤でカスパーゼ3活性化能とアポトーシスの減少がみられた。したがって血清除去KFのアポトーシス誘導にはカスパーゼ3の活性化が重要であることが明らかとなった。正常瘢痕と比較しケロイド組織では活性化カスパーゼ3と9の陽性線維芽細胞やTUNEL陽性細胞が有意に増加しており、一部の線維芽細胞で活性化カスパーゼ3と9を介したアポトーシス発現が示唆された。KF6例を用いた血清除去アポトーシス誘導実験では全例に血清除去3時間目にウエスタン法で活性化カスパーゼ9(p37と3(p17)の発現が認められた。さらに血清除去3時間目ではミトコンドリヤ由来のチトクロムcの流出増加がKFの5例に認められた。このアポトーシス細胞増加はカスパーゼ9阻害剤(LEHD-CHO)で有意に阻害され、カスパーゼ8阻害剤(IETD-CHO)で阻害されなかった。したがって血清除去KFアポトーシス誘導にミトコンドリヤ由来のチトクロムcの増加とその下位の活性化カスパーゼ9の関与が明らかとなった。これよりケロイドではアポトーシス発現は低いもののその細胞死発現にミトコンドリヤ性チトクロムcによる活性化カスパーゼ9の関与が示された。
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