研究概要 |
肺癌の進展に関わる遺伝子群の選別を目的に、非小細胞性肺癌12例(病期I、III期の腺癌及び扁平上皮癌各3例)の癌浸潤部新鮮凍結組織からmRNAを抽出し、DNAマクロアレイ法(Clontech社、Cancer1.2 Array)を用い1176個の癌関連遺伝子の同時発現解析を行った。Cyclin D1をはじめとする細胞周期調節分子、c-mycなどの原癌遺伝子、インスリン様細胞増殖因子、rho関連GTP結合蛋白、ラミニン受容体、DNA複製関連遺伝子、β-カテニン、wnt 8B、elongation factor 1αなど121遺伝子が共通して高発現していた。非浸潤性増殖が特徴の肺胞上皮癌と浸潤・破壊性増殖を示す非肺胞上皮癌(腺癌及び扁平上皮癌)間の比較検討では、後者でのmembrane-type1 matrix met alloproteinase(MT1-MMP)、MMP-3、P21-rac1、vascular endothelial growth factor(VEGF)、jagged-1、jagged-2、notch4、c-fos related antigenなど10種の遺伝子の発現亢進、前者におけるmacrophage inhibitory cytokine(MIC)-1、ezrin(villin2)遺伝子等の有意な発現亢進が示された。非肺胞上皮癌浸潤部におけるMT1-MMP遺伝子の発現亢進は、免疫組織化学による蛋白レベルに加え、gelおよびin situ gelatin zymography法による潜在型MMP-2の活性化を指標とした酵素活性レベルでも確認された。今回のDNAアレイによる解析により、MT1-MMPをはじめとするMMPs遺伝子の発現亢進が肺癌の進展において重要な役割を演ずるというこれまでの研究結果が支持されたことに加え、rac-1/MT1-MMP群、jagged-1,-2/notch 4群、p53/MIC-1群をはじめとする肺癌の進展と正あるいは負の関連を示す幾つかの新規遺伝子群の存在が明らかになった。
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