研究概要 |
横紋筋肉腫の胞巣型では異なる染色体上の2つの遺伝子、PAX、FKHRが部分的に結合し、正常とは異なるDNA配列により異常な蛋白を産生し、腫瘍が発生すると考えらている。これらの再構成遺伝子の機能や腫瘍の発生機構はいまだ明らかではない。しかし、すべての胞巣型横紋筋肉腫にこの変異遺伝子が出現するわけではなく、未知の遺伝子異常の存在も想定される。また,胎児型、多形型の横紋筋肉腫ではこれらの変異遺伝子は見い出されていない。今回7例の多形型横紋筋肉腫を免疫組織化学的に,また,RT-PCR法によりPAX-FKHR変異遺伝子の有無を検討した。7例は成人発生(45〜84才),男女比は6:1で,光顕的に多形型横紋筋肉腫を示唆する紡錘形から多形細胞の増殖を示していた。免疫組織化学的には,デスミン,サルコメリックアクチンが大部分の腫瘍細胞に陽性を示し,一部の細胞質内にミオグロビンが陽性を示した。7例中1例にPAX3-FKHR変異遺伝子の存在を確認した。対象とした悪性線維性組織球腫,骨肉腫症例では免疫組織化学にこれらの抗体は陰性で,PAIX3/7-FKHR変異遺伝子はみられなかった。わずか1例ではあるがPAX-FKHR変異遺伝子の存在は胞巣型と多形型の腫瘍発生機構における類似性を示唆するものであった。現在,染色体分析所見とComparative genomic hybridization法の所見をもとに、染色体の欠失や切断点領域、コピー数の増減を示す染色体領域を明らかにし、臨床所見、予後と関連づけて、横紋筋肉腫に関わる遺伝子異常の検索を行なっている。
|