研究概要 |
平成13年度に引き続き,横紋筋肉腫症例とその鑑別診断上,問題となる悪性軟部腫瘍症例について組織学的,分子生物学・遺伝子学的検討を行った。その結果,横紋筋肉腫の組織学的な診断には,免疫組織化学的にデスミン,サルコメリックアクチンが有効で,両者は大部分の腫瘍細胞に陽性を示したが,ミオグロビンは極く一部の腫瘍細胞の胞体内に陽性を示すに過ぎなかった。CD99(MIC2遺伝子産物)は検討した横紋筋肉腫症例40例中28例に,細胞質内の陽性所見を得た。CD99はT細胞性急性リンパ性白血病細胞を抗原として作成したもので,骨軟部腫瘍の中ではEwing肉腫/PNET群の特異的なマーカーと考えられている。横紋筋肉腫の70%の症例に陽性を示すことは,CD99の横紋筋肉腫の診断への有効性を示唆する。しかし,染色態度はEwing肉腫/PNET群では細胞膜に強度の陽性所見を示すのに対し,横紋筋肉腫では細胞質内に弱い染色態度を示すに過ぎず,診断学上の価値はデスミン,サルコメリックアクチンに劣ると思われる。 遺伝子解析ではPAX-FKHRの再構成キメラ遺伝子の存在が胞巣型に特異的であり,検索した胞巣型全例にこのキメラ遺伝子を検出した。鑑別診断上問題となる悪性リンパ腫,Ewing肉腫/PNET群,悪性線維性組織球腫,胎児型横紋筋肉腫では検出されなかった。一方,多形型7例中1例にPAX-FKHR変異遺伝子を検出した。組織学的には多形細胞,巨細胞を交える紡錘形細胞肉腫の像で,胞巣型の部分は全く含まれていなかった。PAX-FKHR変異遺伝子の検出は1例のみであるが,横紋筋肉腫の発生機構に胞巣型と多形型には何か特殊な関連性があると思われる。
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