研究概要 |
これまでの研究で,甲状腺腫瘍については良性・悪性ともcaveolin-1が常に均一に陽性,caveolin-2は症例により異なっていた。この結果は正常状態の細胞におけるよりも安定しており,腫瘍状態でのcaveolinの機能を解明を目標として甲状腺・下垂体の正常および腫瘍組織について症例数を増やした。しかし,腫瘍細胞におけるcaveolin-1の発現状態も,ばらつきを増したため,光学顕微鏡的検索でcaveolin-1、2に対する免疫染色そのものを再検討した。その結果,ポジティブ・コントロールに用いた脂肪細胞や扁平上皮細胞では安定して陽性が得られ,ネガティブ・コントロールの横紋筋細胞や肝細胞では陰性が得られることが確認された。 従って甲状腺・下垂体は腫瘍化しても,カベオリンは一定の発現をするわけではなく,腫瘍ごとの生物学的活性に応じた発現をしていることが推測される。すなわち,腫瘍状態ホルモン分泌状態や治療経過の異なる臨床症例では,精密な検索が難しい。さらに交付申請書でも述べたように,生命倫理の観点から人体材料の使用には制限がある。そこで,統計処理に十分な検体数を確保するため,ラットにおける正常状態と機能亢進状態でのcaveolin-1、2の発現状態の検索を開始した。現在,エストロゲンの長期投与によるプロラクチン分泌過剰状態を作出中であり,これらのラット下垂体におけるcaveolinの-1、2発現および細胞内局在の変化を形態学的に検索する予定である。 なお,電子顕微鏡的な検索も同時に進行してきたが,本研究費公布後に初めて着手しており,コントロール群おいてもに安定した結果を得るに至っていない。
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