MALTリンパ腫には、異なる核型異常が認められ、API2-MALT1、BCL10が病因遺伝子として見つかっているが、いずれもapoptosis機構に抑制的に作用して、本腫瘍の発生進展に関与するものと考えられている。しかし、これらの遺伝子異常は、発生臓器によって大きく異なることから、発生進展分子機序の異なる亜型の存在が推測される。本年度はMultiple RT-PCR法によるAPI2-MALT1キメラ遺伝子検出及び免疫組織染色法によるBCL10蛋白発現検索から、MALTリンパ腫86症例をAPI2-MALT1(+)と非API2-MALT1(+)の2群に分類し、発生臓器、組織像、多臓器進展、H.Pylori除菌治療効果、臨床病理学的因子との相関を検索し、疾患単位としてのMALTリンパ腫亜型について総合的に検討した。 API2-MALT1(+)群は、11症例(13%)で、臓器別には肺2例(33%)、胃7例(15%)、大腸2例(11%)に認められ、典型的なCCL cellからなるmonotonous typeの組織像(91%)を呈し、多臓器進展が多く(27%)、HP除菌例では全例が治療抵抗性であった。API2-MALT1(+)群は、固有の発生進展分子機序を有し、組織像、病態にも特性が認められることから、独立した有用な疾患単位と考えられる。非API2-MALT1(+)群は、t(1;14)(p22;q32)、t(14;18)(q32;q21)及びtrisomy等の核型異常に由来する、異なった発生進展分子機序を有する病変と考えられ、組織像、病態にも明らかな特性は認められない。さらに細分化した詳細な検索が必要と考えられる。 発生進展分子機序による分類は、個別の治療法に結びつくことから、次世代の悪性リンパ腫分類と考えられ、このような観点からの疾患単位再構築が必要である。
|