がん細胞による活性化される標的間質細胞の同定と間質誘導機構の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670200
• 研究機関: 国立がんセンター
• 研究代表者: 落合 淳志 国立がんセンター, 臨床腫瘍病理部, 部長 (60183034)
• キーワード: がん間質誘導 / 浸潤・転移 / 動物モデル / 試験管内モデル / 線維芽細胞 / 新生血管 / 幹細胞 / 活性化

研究概要

がんの発育進展にはがん細胞と間質細胞との相互作用が重要な役割を果たしている。がん間質を構成とする新生血管や線維芽細胞の細胞由来とそのがん間質誘導機構を解明する目的で本年度は動物モデルならびに試験管内モデル作製を試み以下の結果を得た。
1)Lac Z遺伝子を導入されたマウス(B6129-TgR26Sor)由来骨髄細胞を非標識B6マウスに移植し骨髄細胞だけがLac Zにて標識されているマウスモデルを作製した。このマウスに同系マウス由来のLew is lung carcinoma cell lineを移植してがん細胞により間質を誘導させ、がん細胞による間質誘導に骨髄由来の細胞が誘導されているかを検討した。Low is lung carcinoma細胞の間質形成能は一般に乏しく、間質細胞は、ほとんど血管細胞で構成されていた。また、このがん細胞が誘導する間質血管細胞の一部はLac Z陽性であり、これらの結果よりがん新生血管の一部は骨髄由来であることが示された。
2)種々のヒトがん細胞株を用いて間質誘導機構の違いとその標的細胞を同定する目的で免疫不全マウスであるRAG-1遺伝子欠失マウスを改変しRAG-1遺伝欠失Lac Z遺伝子導入マウスを作製した。同マウスを用いて多種のヒトがん細胞株を移植するとがん細胞株の種類に応じて間質形成能が異なることを組織学的に確認することができた。これらの結果より、本動物モデルにより各がん細胞株による間質誘導機構の違いを検討することが可能になると考えられた。
3)動物実験モデルで用いたがん細胞とその組織から得られた間質細胞を用いて、試験管内で間質誘導能についての検討のための試験管内モデルの作製を開始した。

研究成果

• [文献書誌] Hasebe, T., Ochiai, A., et al.: "Highly proliferative fibroblasts forming fibrotic focus govern metastasis of invasive ductal carcinoma of the breast."Mod Pathol. 14. 325-337 (2001)
• [文献書誌] Yonou, H., Ochiai A., et al.: "Establishment of a novel species-and tissue-specific metastasis model of human prostate cancer in Humanized NOD/SCID mice engrafted with human adult lung and bone."Cancer Res. 61. 2177-2182 (2001)
• [文献書誌] Hasebe, T., Ochiai, A., et al.: "Highly proliferative intratumoral fibroblasts and proliferative microvessel index are significant prognostic paramelers for the T3 ulcerative-type colorectal cancer patients."Hum Pathol. 32. 401-409 (2001)
• [文献書誌] Yonou, H., Ochiai, A., et al.: "Prostate-specific antigcn induces osteoplastic changes by an autonomous mechanism."Biochem Biophys Res Commun. 289. 1082-1087 (2001)
• [文献書誌] Takahashi, S., Ochiai, A., et al.: "Cyloplasmic expression of larninin gamma 2 chain correlates postoperative hapatic meinstasis and poor prognosis in pancreatic ductal adenocarcinoma."Cancer. (in press). (2002)
• [文献書誌] Hasebe T., Ochiai A., et al.: "Prognostic significance of fibrotic focus in invasive ductal carcinoma of the breast : A prospecitive observational study."Modern Patho. (in press). (2002)