がん細胞による活性化される標的間質細胞の同定と間質誘導機構の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670200
• 研究機関: 国立がんセンター研究所
• 研究代表者: 落合 淳志 国立がんセンター, 臨床腫瘍病理部, 部長 (60183034)
• キーワード: がん細胞 / 間質細胞 / 相互作用 / 間質線維芽細胞 / 骨髄由来細胞 / 骨髄移植動物モデル / 増殖能 / 悪性度

研究概要

がんの発育進展にはがん細胞とがんを構成する間質細胞との相互作用が重要な役割を果たしていることが、これまでの研究により、明らかになってきている。また、実際のヒトがん組織において、がんを構成する間質線維芽細胞の増殖能はがん患者の予後に相関し、がん悪性度を規定する因子の一つであることをこれまでに報告している。今年度は、がん間質形成に骨髄由来細胞がどの程度関わるかを明らかにする目的で、Rag-1遺伝子欠失GFP導入マウスの骨髄をSCIDマウスに移植し、同マウスに移植した間質形成能の異なるヒトがん細胞の形成する間質における骨髄細胞の役割を検討し以下の結果を得た。
1)Rag1遺伝子欠失GFP遺伝子導入マウスのSCIDマウスへの骨髄移植はSCIDマウスを5Gy放射線照射によりほぼ90%以上の骨髄が変換され、骨髄移植動物モデルとして用いることが可能と考えられた。本骨髄移植SCIDマウスに膵臓がん、大腸がん、乳がんそして血球由来腫瘍細胞株を皮下に移植しそのがん間質の出来方を検索し、また同時に骨髄由来の細胞が各主眼の間質形成に関わっているかを明らかにした。
2)ヒト膵がん、乳がん、大腸がんそして血球由来腫瘍細胞の順でマウス皮下に間質形成が認められた。各がんの間質形成には骨髄細胞由来血管内皮細胞、線維芽細胞が様々な割合で関与していることが示された。以上の結果は、がんの間質は様々な起源を有する細胞により構成されていることが初めて示された。
3)がん間質細胞の増殖能を検索したところ、骨髄由来の線維芽細胞の増殖能は骨髄以外由来線維芽細胞に比べて有意に高いことが示された。これらの結果は、がん間質を構成する間質線維芽細胞のなかで、増殖能を有しかつがんの悪性度に関わる線維芽細胞は骨髄由来の可能性が高いことが初めて示された。

研究成果

• [文献書誌] Takahashi, S., Ochiai, A., et al.: "Over-expression of sialyl Lewis x antigen associates formation of extra-tumoral venous invasion and predicts postoperative development of diffuse hepatic metastasis in cases with pancreatic ductal adenocarcinoma"Pathobiol. 69. 127-135 (2002)
• [文献書誌] Takahashi, S., Ochiai, A., et al.: "Cytoplasmic expression of laminin gamma 2 chain correlates postoperative hapatic metastasis and poor prognosis in pancreatic ductal adenocarcinoma"Cancer. 94. 1894-1901 (2002)
• [文献書誌] Ueda, T., Ochiai, A., et al.: "Neovascularization in pancreatic ductal adenocarcinoma : microvessel cound analysis. Comparison with non-cancerous regions and other types of carcinomas"Oncology Reports. 9. 239-245 (2002)
• [文献書誌] Hasebe, T., Ochiai, A., et al.: "Prognostic significance of fibrotic focus in invasive ductal carcinoma of the breast : A prospecitive observational study"Modern Pathol. 15. 502-516 (2002)
• [文献書誌] Yonou, H., Ochiai, A., et al.: "Osteoprotegerin/Osteoclastogenesis inhibitory factor decreases human prostate cancer burden in human adult bone implanted into non-obese diabetic/severe combined immunodeficient mine"Cancer Res. (In press). (2003)
• [文献書誌] Yonou, H., Ochiai, A., et al.: "Engraftment of adult human lung tissue in non-obese diabetic/severe combined immunodeficient mice : a novel lung epithelial regeneration model"Pathobiology. (In press). (2003)