がんの発育進展にはがん細胞とがんを構成する間質細胞との相互作用が重要な枠割を果たしていることがこれまでの研究で明内なってきている。また、実際のヒトがん組織において、がんを構成する間質線維芽細胞の増殖能はがん患者の予後に相関しがん悪性度を規定する因子の一つであることをこれまでに報告してきている。本研究ではがん間質形成に骨髄由来細胞がどの程度関わるかを明らかにする目的で、様々なヒトがん細胞を用いた検討を行うために、Rag1遺伝子欠失GFP遺伝子導入マウスを作製し、その骨髄細胞をSCIDマウスに移植し、同マウスに移植した間質形成能の異なる様々なヒトがん由来細胞が形成する間質細胞の骨髄細胞の役割を検討し以下の結果を得た。 1)Rag1遺伝子欠失GFP遺伝子導入マウスの作製が出来た。また同マウスの骨髄細胞のSCIDマウスヘの移植は5Gyの放射線照射によりほぼ90%以上の骨髄細胞が変換され、骨髄移植動物モデルとして用いることが可能と考えられた。本骨髄移植SCIDマウスに膵臓がん、大腸がん、乳がん血球由来ヒト腫瘍細胞株を移植し、そのがん間質形成能と骨髄由来細胞の形質を確認できた。 2)ヒト膵がん、乳がん、大腸がんそして血球由来腫瘍細胞の順でマウス皮下に間質形成が認められた。各がんの間質形成には骨髄細胞由来血管内皮細胞、線維芽細胞が様々な割合で関与していることが示された。これらの結果は、がんの間質は様々な起源を有する細胞により構成されていることが初めて示された。 3)がん問質細胞の増殖能を検索したところ、骨髄由来線維芽細胞の増殖能は骨髄以外由来線維芽細胞に比べて有意に高いことが示された。これら結果は、がん間質を構成する間質線維芽細胞のなかでがんの悪性に関わると考えられる線維芽細胞は骨髄由来である可能性が示された。
|