乳癌・大腸癌の浸潤・転移を規定する腫瘍間質線維芽細胞・細血管内皮の特性の解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670201
• 研究機関: 国立がんセンター
• 研究代表者: 長谷部 孝裕 国立がんセンター, 研究所・支所・臨床腫瘍病理部, 遺伝子研究室長 (00250209)
• キーワード: 乳癌 / 浸潤性乳管癌 / 大腸癌 / 線維芽細胞 / 血管内皮 / 線維化巣 / 転移 / 浸潤

研究概要

今まで、浸潤性乳管癌内の線維化巣が、浸潤性乳管癌患者の予後因子となることを後ろ向き検討により証明してきたが、今回439例の浸潤性乳管癌症例による前向き検討において、癌巣内に腫瘍間質線維芽細胞よりなる線維化巣の存在が、浸潤性乳管癌の重要な予後因子になることをあらためて確認した。この検討において、線維化巣の長径が重要であることが判明し、線維化巣の長径が8mmを越える乳管癌症例は、リンパ節転移の有無、ホルモン受容体蛋白発現の有無で層別化を行った検討において、腫瘍再発率、遠隔臓器転移率が線維化巣の長径が8mm以下の症例に比べ有意に高いことを証明した。また、線維化巣の長径が17mmを越える乳管癌症例は特に悪性度が高く、リンパ節転移、ホルモン受容体蛋白発現の有無に関係なく、長径が17mm以下の乳管癌症例に比べ腫瘍死率が有意に高いことを明らかとした。以上のことは、浸潤性乳管癌の腫瘍間質成分、特に線維芽細胞が乳管癌の悪性度を規定する上で、腫瘍細胞成分より重要な役割を担っていることを証明したことになる。また、この検討は前向き検討であることから、研究者の意図が加えられた検討ではない。よって、後ろ向き検討に比べより一層信頼性の高い結果と考えられる。
また、我々はリンパ管内に侵入した腫瘍細胞の性状と乳癌の浸潤・転移の関係を解明するため前向き検討を行った。その結果、リンパ節転移陰性群ではリンパ管内腫瘍塞栓形成腫瘍細胞のアポトーシス数が、リンパ節転移陽性群ではリンパ管内腫瘍塞栓形成腫瘍細胞の核分裂数が重要な腫瘍の浸潤・転移規定因子となることを明らかとした。
上記の二つの検討は腫瘍間質線維芽細胞、リンパ管内侵入腫瘍塞栓形成腫瘍成分が乳管癌の浸潤・転移において重要な役割を担っていることを本研究により初めて明らかにしたものである。

研究成果

• [文献書誌] Hasebe T, Sasaki S, Sugitoh M, et al.: "Highly proliferative intratumoral fibroblasts and a high proliferative microvessel index are significant predictors of tumor metastasis in T3 ulcerative-type colorectal cancer."Human Pathology. 32. 401-409 (2001)
• [文献書誌] Hasebe T, Sasaki S, Imoto S, Ochiai A.: "Highly proliferative fibroblasts forming a fibrotic focus govern metastasis by invasive ductal carcinoma of the breast."Modern Pathology. 4・14. 325-337 (2001)
• [文献書誌] Hasebe T, Sasaki S, Imoto S, Ochiai A.: "Prognostic significance of fibrotic focus in invasive ductal carcinoma of the breast : A prospecitive observational study."Modern Pathology. (印刷中). (2002)
• [文献書誌] Hasebe T, Sasaki S, Imoto S, Ochiai A.: "Characteristics of fumors in lymph vessels play an important role in the fumor Progression of invasive ductal carcinoma of the breast : A prospecitive study."Modern Pathology. (印刷中). (2002)