研究概要 |
1.浸潤性乳管癌(Invasive ductal carcinoma, IDC)巣内線維化巣(Fibrotic focus, FF)を構成する線維芽細胞の増殖能が、IDC患者の予後を推測する上で非常に重要な予後因子となることを後ろ向き検討により証明した。今回さらに439例のIDC症例による前向き検討において、IDCにおけるFFの存在が、浸潤性乳管癌の重要な予後因子となることを確認し、さらにFF長径が8mmを越えるIDC症例はリンパ節転移の有無、ホルモン受容体蛋白発現の有無で層別化を行った検討において腫瘍再発率、遠隔臓器転移率がFFの長径が8mm以下のIDC症例に比べ有意に高いことを証明した。 2.潰瘍型進行大腸癌において腫瘍厚が予後を反映することを証明したが、今回の検討においてその腫瘍厚を規定しているのは腫瘍細胞の増殖能ではなく、腫瘍間質線維芽細胞、細血管内皮細胞の増殖能であることを明らかとし、後者2者増殖能がリンパ節、肝臓等の遠隔臓器転移に密接に関係していることを証明した。 3.IDCにおいてリンパ管腫瘍塞栓、静脈腫瘍塞栓およびリンパ節転移腫瘍の性状を検討し、それら成分の性状がIDCの増殖・進展にどの様な影響を与えるのか前向き検討を行った。その結果、核分裂数・アポトーシス数が多い脈管腫瘍塞栓成分および器質化静脈塞栓を有するIDC症例は、これらの所見を認めないIDC症例に比べ、有意に予後が不良であった。また、リンパ節転移腫瘍性状では、腫瘍細胞核分裂数、リンパ節外浸潤およびリンパ節外腫瘍塞栓の有無が重要な予後因子となることを明らかとした。 1-3の検討は、腫瘍間質細胞、脈管内腫瘍成分、リンパ節転移腫瘍成分がIDC並びに進行大腸癌の浸潤・転移において重要な役割を担っていることを初めて明らかにしたものである。
|