硬膜移植後発症のクロイツフェルト、ヤコブ病(硬膜CJD)患者12例の臨床像病理像プリオン蛋白遺伝子配列、および脳組織中の異常プリオン蛋白のタイプを解析した。 硬膜CJD患者のプリオン蛋白遺伝子には変異は認められず、コドン129番、219番各多形の頻度は健常日本人のものと有意差が無かった。ただし、今回解析した症例の中には219番Lys型を持った個体は含まれておらず、今後より多くの症例の解析結果を得ることにより健常個体群との間に有意差が生じる可能性がある。 硬膜CJDには、病理像の差から二つのサブタイプが存在することが示された。一つが典型的なクロイツフェルト、ヤコブ病(CJD)の病理像をとるタイプ(非プラーク型)で、もう一つが斑状のプリオン蛋白沈着が脳内に認められるタイプ(プラーク型)である。また臨床的にも、プラーク型でミオクローヌスおよび脳波上のperiodic synchronous dischagesの出現が有意に遅れる、あるいは神経機能障害の進行(無動性無言状態への移行)が有意に遅れる等の違いが認められた。異常プリオン蛋白のタイプとしては両サブタイプともにタイプ1であるが、11-12kDのプリオン蛋白C末端断片が非プラーク型にのみ認められるという違いが明らかになった。 このプリオン蛋白断片は、全長型の異常プリオン蛋白と同様に蛋白分解酵素耐性かつ不溶性の異常分子種であり、実験による人工産物ではなく、患者脳組織中に存在していた。これらの臨床的、病理学的、ならびに生化学的違いから硬膜移植CJDの二つのサブタイプはほぼ確立されたと考えられる。
|