平成13年度に我々は硬膜移植後発症のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)患者の解析を行い、病理像・.臨床像の異なる2つのタイプ(非プラーク型とプラーク型)が存在するとともに、非プラーク型患者では脳組織中に11-12kDaの蛋白分解酵素耐性プリオン蛋白C末端断片(fPrP11-12)が蓄積しているが、プラーク型患者ではそれが認められず、硬膜移植後CJDに2つのタイプが存在することを示す生化学的証拠となることを報告した。平成14年度は、fPrP11-12が他のプリオン病の病型において検出されるか否かを検討した。その結果、fPrP11-12は孤発型CJDのうちの或る特定のサブタイプ、および複数のタイプの遺伝性CJDで検出される一方、孤発型CJDの別のサブタイプや変異型CJDでは検出されず、その存否は病型によって一定していること、ならびに正常個体には全く検出されないことを明らかにした。これらのデータは、fPrP11-12がプリオン病の病態の本質と深く関わってることを示している。また、fPrP11-12の性状をさらに詳しく解析し、糖鎖の結合していない分子種が主であるが、結合している分子種も存在することを明らかにした。また、プリオン蛋白の異なる部位と反応する複数の抗体を用いたマッピングでも、fPrP11-12には2カ所の糖鎖結合部位が存在することが示された。さらに、これらの研究の過程で、コドン232番のメチオニンからバリンへのアミノ酸置換を持つ遺伝性CJD患者3例(2例が129番メチオニン/メチオニンタイプ、1例が129番メチオニン/バリンタイプで、いずれもメチオニンタイプのallele上に変異を持つ)において、脳内に蓄積している異常型プリオン蛋白がタイプ1であることを世界で初めて明らかにした。
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