研究概要 |
成熟F344ラット肝細胞凝集塊をコラーゲンゲル内に包埋培養する肝細胞のorganoid culturesを用いて,肝細胞の胆管上皮様化生のメカニズムを検討した.以下に平成14年度に得られた知見を要約する. 1)チロシンリン酸化シグナル伝達分子の変化 肝細胞形質変化に伴ってERKおよびAktがリン酸化され,これらを特異的inhibitors(PD98059,LY29004)で抑制することにより形態形成およびCK19の発現がほぼ完全に抑制された.これは肝細胞の化生現象にRas-MKK-MAPK経路,P13K-Akt経路が深く関わっていることを示唆している. 2)Notchシグナル系の活性化 Notchシグナル系が肝内胆管の発生に関与していることが最近明らかになっている.RT-PCR法を用いた検討で,肝細胞におけるJagged 1,2,Notch 1,さらにNotchのdirect targetsであるHes2およびHERP2の発現が増加しており,肝細胞の化生に伴いNotchシグナル系が活性化されていることが判明した.また,免疫染色によりほとんどすべての培養肝細胞にNotch 1,Jagged 1の発現が確認され,それぞれの細胞がNotch系のリガンドと受容体の両方を発現していると考えられた. 3)CK19遺伝子プロモーター結合蛋白のスクリーニング CK19蛋白開始コドンから203bp上流のプロモーター領域について,10個のプローブ(25bp)を用い,EMSA法で検討したところ,蛋白結合部位が3ヶ所同定された.また,これらの結合はいずれも培養後の肝細胞核抽出物で増加することが判明した.現在,streptavidin-agaroseビーズを用い,これらの蛋白の同定を試みている.
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