研究概要 |
悪性リンパ腫発症に関わる第1染色体上の転座切断点領域から疾患原因候補遺伝子をクローニングし、その分子機構を明らかにすることを目的として、特に1p36領域と1q増幅領域に注目してFISH法による転座切断点の特定を試みた。このうち1p36領域については、SCIDマウス内B細胞性腫瘍細胞株HMS24の1p36切断点を含むと思われるCEPH YACクローン762B5を特定し、NCBIのEntrez Map Viewを検索(www.ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/Entrez/)した結果、STSマーカーSHGC-110595(1pterから8.24M)からD1S1615(8.50M)までを含む約260kbの範囲内に1p36転座切断点の可能性を狭めた。さらに、この領域をカバーする6種類のBAC/PACクローンを用いたFISH法による切断点の絞り込みにより、1p36切断点は100kbオーダーまで狭まった。 一方、1q増幅領域に関連しては、B細胞性悪性リンパ腫の稀な一型であるPELの患者から樹立した二種類の細胞株において、染色体特異的ペインティングプローブを用いた詳細なFISH解析の結果、第1染色体の一部が、OS1株では第5染色体上に、PSu株では第17染色体上にそれぞれ挿入されて増幅していることを明らかにした。第1染色体のどの領域がどのように増幅しているのか明らかにするためにCGH(Comparative Genomic Hybridization)法でこの部位を特定したところ、第1染色体長腕1q21-q25(OS1株)と1q25-q32(PSu株)領域と推定された。また、1qコスミドプローブのFISH解析からPSu株においてはこの領域でB-A-C-A-Bタイプの重複ユニットであることが明らかになった(Satoh et al.,in preparation)。この領域は様々な癌において染色体増幅が報告されているがAmpliconの特定や疾患候補遺伝子はまだ単離されていない。現在、BAC/PACプローブを用いて1q25共通増幅ユニットの特定を進めている。
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