IER脳のグリオーシスの部位とその程度を解析することにより、てんかん発作に伴うダリア細胞反応の意義を解明できるという作業仮説を立てた。発作進展に伴うミクログリアの分布とその程度を免疫組織化学的方法により明らかにしてんかん発作発現時のミクログリアの機能を検索した。IER並びに対照ラットの頭頂葉皮質、嗅内皮質、視床、扁桃対、海馬、歯状回のOX-42陽性ミクログリアの密度を計数した。IERでは2ヶ月齢ラットにおいて海馬、視床、扁桃体を中心に大脳全体に軽度ないし中等度のOX-42陽性ミクログリアが認められた。6ヶ月ラット齢並びに10ヶ月齢ラットでは海馬、視床、扁桃体には著明な陽性細胞が認められ、その他の部位にも全体にわたり中等度から高度の陽性グリアが認められた。発作発現・進展に伴い海馬、視床を中心としてOX-42陽性ミクログリアの増生が明らかとなった。IER脳で増生するミクログリアは、グリア突起が太くて短く活性型アメボイドタイプのミクログリアであった。以上の結果よりIERではてんかん発作発現と発作活動によりミクログリアの活性化が誘導されたと考えられた。ミクログリアは発作に伴う神経細胞、グリア細胞の機能にミクログリアにより産生されるサイトカインを媒体に作用を発揮しているものと考えられる。ミクログリアの増生は視床、海馬、扁桃体において他の部位に比較して早期より認められ、これらの部位が発作発現に重要な位置を占めていると考えられた。他の部位にも中等度のミクログリア増生が見られることは、てんかん発作の影響が脳全体におよんでいることを示している。IER脳内ミクログリア細胞の動態をてんかん発作未発症期、発症期、進展期に分けて免疫組織科学的に検索した。IERでは発作の進展に伴い海馬、視床、扁桃体を中心に活動型ミクログリアの著明な増数が認められた。このような活動型ミクログリアはてんかん発作発現に機能的な影響を与えているものと考えられた。
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