プロテイン・フォスファータゼ2A(PP2A)B56γ制御サブユニットのN末欠失アイソフォーム(異変γ1)の単離:(1)高転移性マウス・メラノーマBL6細胞では、PP2A B56γ制御サブユニット遺伝子においてレトロウイルスポゾンがイントロンに挿入し、そのアリルからは新たなスプライシングによってレトロウイルスポゾンの一部が融合したmRNAが転写された。このmRNAはN末の65アミノ酸残基を欠失するPP2A)B56γ制御サブユニットのN末欠失型アイソフォーム(変異γ1)がコードされていた。(2)PP2Aホロ酵素は構造・触媒サブユニットの2量体コアに制御サブユニットが結合したヘテロ3量体である。in vitroでの再構築系によるフォスファターゼ・アッセイの結果、変異γ1は正常型アイソフォーム(B56γ1)を含むPP2Aホロ酵素の脱リン酸化活性に対する阻害因子であった。 変異γ1の細胞内局在:(1)作製した抗体による免疫細胞化学の結果、PP2A B56γ制御サブユニットの細胞質内における主たる局在部位はゴルジ体であることがわかった。(2)エピトープ・タグした蛋白の免疫細胞化学の結果、変異γ1は主として小胞体とゴルジ体の間(ERGIC)の小胞に局在するとともに、ゴルジ58Kやp115分子の局在を変化させた。即ち、両分子の局在はゴルジ体主体からERGIC主体へと変化した。 変異γ1による細胞内小胞輸送の加速化:(1)温度感受性変異型ウイルス蛋白質ts045 VSVGは温度依存性に細胞内で小胞体→ゴルジ体→細胞膜へと小胞輸送される。この蛋白に自家蛍光物質GFPを融合させ生細胞内における局在を可視化した培養系を用いて、変異γ1の細胞内小胞輸送系における影響を調べた。小胞体に蓄積したts045 VSVGが細胞膜に到達するのに要する時間は変異γ1発現細胞において有意に短縮していた。
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