研究課題/領域番号 |
13670216
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 透 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (50280962)
|
研究分担者 |
仲野 徹 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00172370)
|
キーワード | 生殖系列 / 始原生殖細胞 / 幹細胞 / Pten遺伝子 / テラトーマ / 胚性生殖細胞 / germ cell-less遺伝子 / クロマチン・リモデリング |
研究概要 |
マウス始原生殖細胞(PGC)におけるPten遺伝子の機能を、PGC特異的Pten欠損マウスを用いて解析した。その結果、新生仔オス・マウスで精巣性テラトーマが発症することが明らかとなった。胎仔期の精巣を調べたところ、Pten欠損マウスのPGCにおいては、生殖細胞特異的マーカーの発現が消失し、未分化細胞特有のマーカー発現パターンを獲得することが示された。また、培養系において、PGCから胚性生殖細胞への脱分化が異常に亢進していることが明らかとなった。これらの結果は、PtenによるPI3キナーゼの負の制御が雄性生殖細胞の成立に必須であり、その制御機構が欠損すると生殖細胞が分化多能性をもつ幹細胞に脱分化することを示している。 マウスgerm cell-lessホモログ(mgcl-1)欠損マウスを作製し、mgcl-1の生殖細胞分化・発生における機能を解析した。ショウジョウバエのgclはPGCの形成に重要な機能をもつことから、マウスにおいてもPGCの発生に関与している可能性が考えられたが、mgcl-1欠損マウスにおいてPGCの発生は正常であった。しかし、形態異常をもつ精子が産生されるため、オスの生殖能力は低下していた。精子の形態異常は主に核でみとめられ、精子核凝集過程で核膜の形態異常やクロマチン・リモデリングの異常が認められた。また減数分裂時にも核膜の形態異常が認められ、核膜のコンポーネントの分布に異常が認められた。最近mgcl-1タンパクは核膜のコンポーネントの1つであることが示されている。私たちのmgcl-1欠損マウスの結果は、mgcl-1が正常な核膜構造の維持に必須であること、さらには核膜の正常な構造が精子形成時のクロマチン・リモデリングに重要であることを示している。
|