癌細胞骨浸潤過程における破骨細胞分化因子の役割

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670217
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 北澤 荘平 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90186239)
• キーワード: 悪性腫瘍 / 溶骨性骨転移 / 破骨細胞 / RANKL / PTHrP / 高カルシウム血症

研究概要

腫瘍の転移は、腫瘍細胞増殖・基底膜をこえての浸潤・脈管侵入・転移先での脈管外侵出・腫瘍細胞増殖と周囲組織破壊という一連の過程を辿つ。乳癌の骨転移の分子機構を解明するために、特に骨という硬組織の特性をふまえ、腫瘍細胞と骨の細胞や骨基質との相互作用、癌の骨浸潤・骨破壊のメカニズムについて検討した。
PTHrPなどの腫瘍由来の骨吸収因子はRANKL発現促進を介して骨吸収促進に寄与することが想定されるため、実験モデルを用いて乳癌の骨浸潤巣におけるPTHrPとRANKL発現とを解析するとともに、PTHrPのRANKL遺伝子プロモータに対する作用機序を解明した。
1)乳癌培養細胞MCP-7をマトリゲルと混合後、ヌードマウス頭蓋骨皮下に移植し経時的に頭蓋骨を採取し、4%パラホルムアルデヒド固定20%EDTA脱灰パラフィン包埋薄切標本を作製し、骨浸潤像を組織学的に評価しTRAP染色にて破骨細胞を同定した。マウスRANKL及びRANK、ヒトPTHrPに対するDigoxigenin標識1本鎖DNA probeを用いてin situ hybridizationを行い、骨浸潤局所におけるRANKL、RANK、PTHrPの発現局在を明らかにし、腫瘍細胞と骨組織の細胞とのcell-to-cell interactionについて検討した。
2)RANKL遺伝子発現に対するPTHrPの効果を検討した。骨芽細胞のRANKL mRNA発現に対するPTHrPの効果をNorthern blotにて解析し、さらに骨芽細胞のRANKL転写活性に対するPTHrPの効果をNuclear run-onにて解析した。分子レベルでの作用機構を解析するために、申請者等がクローニングしたRANKLプロモータにおけるPTHrPの作用するエレメントを検討した。その結果、上流4kbの検索範囲には典型的CRE(c-AMP応答配列)はなかったが、C-Kinase以降のFos, Junの関与が想定された。以上の成果は第91回日本病理学会総会、第20回日本骨代謝学会、第61回日本癌学会総会、第24回米国骨代謝学会会議にて発表し、論文(J. Pathol、BBRC他)として成果を残した。

研究成果

• [文献書誌] Kitazawa S, Kitazawa R: "RANK ligand is a prerequisite for cancer-associated osteolytic lesions"J Pathol. 198・2. 228-236 (2002)
• [文献書誌] Kitazawa S, Kitazawa R: "Epigenetic control of mouse receptor activator of NFkB ligand gene expression"BBRC. 293・1. 126-131 (2002)
• [文献書誌] Mori H, Kitazawa R, Mizuki S et al.: "RANK ligand, RANK and OPG expression in type II collagen-induced arthritis mouse"Histochem Cell Biol. 117・3. 283-292 (2002)
• [文献書誌] Kitazawa R, Kitazawa S: "Vitamin D3 augments osteoclastogenesis via Vitamin D-responsive element of mouse RANKL gene promoter"BBRC. 290・2. 650-655 (2002)
• [文献書誌] Kitazawa R, Kobayashi A, Maeda S, Kitazawa S: "Expression of parathyroid hormone-related protein (PTHrP) in parathyroid tissues of normal and pathological conditions"Histol Histopathol. 17・1. 170-184 (2002)
• [文献書誌] Kitazawa R, Kitazawa S, Kajimoto K, et al.: "Parathyroid hormone-related protein (FTHrP) expression in multiple myeloma : a case report"Pathol Int. 52・1. 63-68 (2002)