悪性腫瘍骨転移については、腫瘍細胞と骨の細胞との相互作用が重要であり、殆どの腫瘍では溶骨性骨転移を示すため、骨転移巣での破骨細胞形成の変化を解明することが重要である。そこで私どもは溶骨性骨病変の実験モデルにおける破骨細胞形成機構について検討した。ヒト培養乳癌細胞をヌードマウス頭蓋骨皮下に移植し、経時的に骨を採取して腫瘍性骨破壊病変における破骨細胞分化因子(RANKL)と高カルシウム血症惹起因子PTHrPの発現をin situ hybridizationにて評価した。腫瘍に近接する骨表面では、骨芽細胞におけるRANKL発現が先行した後に破骨細胞が誘導され、骨破壊病変を形成することが明らかとなった。PTHrP産生能の異なる腫瘍細胞を比較すると、PTHrP高発現の亜株は低発現の亜株に比して高率に骨浸潤を形成した。培養骨芽細胞におけるRANKL発現や遺伝子プロモータの転写活性に対してもPTHrPは促進効果を示した。PTHrPの転写促進効果について詳細な検討を行った。マウスRANKL遺伝子プロモーターには古典的なCREはないが、上流1kb付近のVDREに一部重複してCRE類似配列が見出された。EMSA法にて有意な蛋白DNA結合を認め、PTHrPの作用経路としてPKA経路の関与が示唆された。TPA等のagonistや、PTHrPとPKC antagonistとの共処理の結果からC-kinase系の関与も想定され、EMSA法にてC-kinase系の下流のFos、Junが作用する可能性を示した。さらにヒトの悪性腫瘍骨転移巣におけるRANKL発現を検索するために、ヒトRANKL遺伝子に対する高感度・特異的なプローブを作成してin situ hybridization法を行った。 以上の成果は、英文誌に(J Pathol)掲載された。また第90回第91回日本病理学会総会、第19回第20回日本骨代謝学会、第61回日本癌学会総会、第23回第24回米国骨代謝学会議にて報告した。
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