研究概要 |
シェーグレン症候群(SS)は乾燥性角結膜炎によるドライアイや口腔乾燥症を臨床症状とし、涙腺・唾液腺にリンパ球浸潤を伴った組織破壊があり、患者血清中には種々の自己抗体が検出される臓器特異的自己免疫疾患である。最近申請者らは、本症に特異的な自己抗原がα-fodrinの断片(N末側38番目アミノ酸から始まる120kD)であることを実験モデルマウスから明らかにし報告した(Science.1997,276,604-607 Haneji.N.et al.)。そこでSS患者の診断・治療を目的に、患者血清がα-fodrinのどの断片と反応するかウエスタンブロット法で確認したところ、N末側の断片により多くの患者血清が反応することを認めた。この段階では既存の共同研究者より提供された数種類のα-fodrin断片を使用していたが、今回上記120kに近い断片を作成し、ELISA法にて患者血清が有意に健常者血清より強く反応することを確認した。 アポトーシスに伴うα-fodrinの分断化は、世界各国の研究者によって神経組織、リンパ球などで研究され、calpainやcaspaseがα-fodrinをいくつかの断片に切断することが既に報告されている。当教室でも唾液線樹立細胞株に種々の刺激によるアポトーシスを誘導するとα-fodrinが分断化されその際にcalpainやcaspase3が関与することを確認している。しかしSS唾液線で優位に上昇する上記120kD断片とはN末も分子量も異なるものである。SS発症においては唾液腺特有のプロテアーゼが関与していると考えられ、このプロテアーゼを同定することはSS発症・進行の機序解明の第一歩になるはずである。今後は作成したSS患者の自己抗体が反応するα-fodrinのN末、C末配列を確定し断片化に関わるプロテアーゼの同定を実施したいと考えている。
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