研究概要 |
食細胞NADPHオキシダーゼの主要構成成分であるシトクロムb558重鎖(以下CYBBと略す)の遺伝子上流-53塩基にあるPU.1結合部位(-53PU.1)の点変異によるCYBB転写異常が主因である活性酸素産生不全症(慢性肉芽腫症(CGD))患者でインターフェロン-γ(IFN-γ)が良く効く原因を解明するために研究を行い,前年度はIFN-γによるCYBB遺伝子転写活性化における,遺伝子上流-100塩基にあるIFN-γactivation site(-100GAS)と-100GASの下流側に隣接して存在するInterferon-stimulated response element (ISRE)部位(-88ISRE)を通したSTAT-1αとIRF-1による協調的調節機構(-100STAT-1α/-88 IRF-1機構)の存在を見出した。そこで本年度は研究計画に基づき,つぎの事柄を明らかにした。 1)CBP/p300及びこれ以外のco-activatorの-100STAT-1α/-88IRF-1機構への関与。 CYBB遺伝子の+12から-115塩基を持つレポータープラスミド(p-115/+12)を用い,アデノウイルスEla蛋白質によるCBP/p300 coactivater活性の特異的抑制が,IFN-γによるCYBB遺伝子転写活性誘導にどの様な影響を及ぼすかを調べたところ,約30%の抑制効果しか認めらなかったことから,これまでの報告から予想されるcoactivaterであるCBP/p300は部分的な関与にとどまり,他のcoactivaterによる新しい機構が存在することが考えられた。また,p300の過剰発現の影響を同様に調べたところ殆ど影響が無かったことから,CBP/p300の量はrate limit Factorではないと考えられた。 2)-100STAT-1α/-88IRF-1機構が本CGD患者におけるIFN-γ著効機序の本体である。 -53PU.1変異型レポータープラスミド(P-115/+12-53T)で認められる正常型同様のIFN-γによる転写活性誘導に対する-100GASまたは-88ISREの破壊の影響を調べたところ,何れにおいても誘導能がほぼ無くなることから,-100STAT-1α/-88IRF-1機構が,-53PU.1非依存性のIFN-γによるCYBB転写誘導機構,すなわち本CGD患者におけるIFN-γ著効機序の本体であると考えられた。
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