研究概要 |
Th1サイトカイン(IL-12)あるいはTh2サイトカイン(IL-4,IL-13)のシグナル伝達にかかわるSTAT4 (signal transducer and activator of transcription 4)およびSTAT6の自然免疫における役割を知るために,STAT4^<-/->およびSTAT6^<-/->マウスに実験的に腹膜炎誘発敗血症を誘導し,その後のマウスの生存率,局所および全身でおこる現象を解析した.マウス致死率は,STAT4^<-/->およびSTAT6^<-/->ともコントロールマウスにくらべ改善され,両者とも敗血症抵抗性であることが判明した.マウスの局所および全身の菌数を比較すると,STAT4^<-/->マウスでは変化なかったものの,STAT6^<-/->マウスでは有意に低下していた.局所の浸潤白血球数には変化はみられず,腹腔マクロファージの菌貧食・消化能にも差はなかったが,STAT6^<-/->マウスでの服腔内IL-12,TNFα,MDC, C10産生量は有意に高かった.これらのサイトカイン・ケモカインは細菌排除に働く因子である.一方,局所反応に差はなかったものの,STAT4^<-/->マウスでは肝・腎障害はほとんどおこらず,このとき,組織中の炎症反応も有意に軽減していた.これら臓器中のサイトカイン産生量を比較すると,STAT4^<-/->マウスでは抗炎症に働くTh2サイトカインIL-10,IL-13産生は有意に高く,逆に,炎症に寄与するケモカインMIP-2,KCは有意に低下していた.すなわち,Th1/Th2バランスによりSTAT6^<-/->マウスではTh1型反応の増強により菌の排除が促進され,STAT4^<-/->マウスではTh2型反応の増強により所臓器障害が抑制され,ともに死亡率は改善されたと考えられた.この結果は,STAT因子の合目的的制御は,敗血症およびそれに随伴するショック,多臓器障害に対する新しい治療戦略になることを示唆する.
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