研究概要 |
ギャップ結合は,細胞間のコミュニケーションに重要な役割を果たし,細胞の増殖および分化に密接に関係していると考えられている。一方,部分肝切除および初代培養肝細胞の実験において,肝細胞の増殖あるいは増殖抑制にMAPK, P13K, p38 MAPK経路によるシグナル伝達が重要な役割を果たしていることも明らかとなってきた。今回我々は,肝細胞の増殖と分化の結果である肝再生におけるギャップおよびタイ卜結合の役割を培養肝細胞を用いてin vitroで明らかにした。 1.ギャップおよびタイト結合の肝細胞分化への関与の解析 1)初代培養ラット肝細胞系を用いた検討 in vivoの肝細胞の生理的条件に非常に近似しているギャツプおよびタイト結合高発現初代培養ラット肝細胞を用いて検索した結果、ギヤップ結合蛋白とタイト結合蛋白の密接な関係が明らかになった。 2)Cx32遺伝子を導入したマウス肝細胞株を用いた検討 Cx32欠損マウスから樹立したマウス肝細胞株にヒトCx32遺伝子を導入した結果,明らかなタイト結合の誘導およびアクチンの再構築がみられた。以上のことは、肝ギャップ結合はタイトおよびアクチンの変化を介して肝細胞の分化に積極的に関与している可能性が考えられた。 2.In vitro再生肝モデルを用いたシグナル伝達によるギャップおよびタイト結合の発現調節機構の解明 ギャップおよびタイト結合高発現初代培養ラット肝細胞を用いて、増殖刺激のオンオフによるin vitro再生肝モデルを作製し,シグナル伝達経路であるMAPK, P13K, p38 MAPKの各inhibiter(PD98059,LY294002,SB23850)を処置した結果,増殖刺激によるギャップおよびタイト結合の発現および機能の変化は、MAPKおよびp38MAPK経路で調節されていることが明らかになった。
|