本研究は、生体高分子との強い反応牲を有するアクロレインやヒドロキシノネナール(HNE)などの脂質過酸化生成物と発がんとの関連についてレポーター遺伝子導入マウスなどを用いで究明し、その分子機構を追究することを目的とする。今年度は肝臓に脂質過酸化を惹起することが知られている四塩化炭素をラットに投与し、酸化物DNA傷害のマーカーである8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)および脂質過酸化生成物によるDNA蛋白付加体の推移について検討した。13週齢の雄性F344ラットを各群30匹の3群に分け、オリーブ油に溶解した四塩化炭素を3200、1600、0(対照群)mg/kgの用量で強制経口投与し、2、4、6、24、48、72時間後に肝臓を採取した。脂質過酸化生成物による蛋白付加体を免疫組織化学的に検索し、DNA付加体を^<32>Pポストラベル法により定量した。また、8-OHdGをELISA法により定量した。その結果、HNE修飾蛋白は6時間後から出現し、24時間後にピークとなった後、72時間後には殆ど消失した。この推移は用量相関性に観察され、組織変化にやや先行する傾向が認められた。アクロレインDNA付加体は24および72時間後で有意に増加し、8-OHdGは2時間後において既に用量相関性の有意な上昇を示した。次年度以降は、レポーター遺伝子を導入したマウスやラットに脂質過酸化誘発物質を投与し、変異原性および発がん性を臓器レベルで比較検討する実験を開姶する。
|