多因子乗算論に基づく薬物障害検知モデルとしての遺伝子改変促進加齢動物の作出と解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670236
• 研究機関: 国立医薬品食品衛生研究所
• 研究代表者: 平林 容子 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 室長 (30291115)
• 研究分担者: 井上 達 国立医薬品食品衛生研究所, 安全性生物試験研究センター, センター長 (50100110)
• キーワード: 加齢の多因子乗算論 / 造血幹細胞 / klotho遺伝子変異マウス / p53欠失マウス

研究概要

下記全体計画3項目の内、(1)と(2)を中心とした研究、並びに、(3)の交配を行い、p53・klotho共にヘテロのマウスの解析を始める。即ち、老化マウスで既に当研究者らが得た結果を基にklothoマウスの造血幹細胞動態を解析すると共に、化学物質の連続暴露による加齢変化のmanifestationを仮説として促進加齢の程度を観察する。
(1)klothoマウスの基礎データの採取、特に造血幹細胞に関するそれらのデータの実験的蓄積(平林・井上):klothoマウスの造血幹細胞の細胞生物学的特徴を、定常状態と、化学物質(メチルニトロソウレア:MNU)暴露時とで比較しつつ、各種造血前駆、幹細胞コロニー形成法にて検討し、klothoの定常状態での培養性造血前駆細胞数が、個体ごとにばらつき、野生型に比べて増加するものや減少するものなどマチマチであるという結果を得た。これは加齢の進行が個体ごとに異なることを反映するものと考えている、尚、脾臓重量はほぼ半減する。骨髄細胞数は、若齢個体(4週齢)では、野生型と変わらず、大腿骨長比ではむしろ増加していた。
(2)(1)での結果を裏付ける分子生物学的検索(平林・井上):(1)で得られた結果を基に、この裏付けとなるp53、p21などの細胞回転制御分子をはじめ、酸化的ストレスなどの外的要因反応性分子群の発現変化の同定を行う目的で、検体の採取を進めた。
(3)p53欠失マウスとklothoマウスの交配(平林):熊本大学相澤慎一教授らによって樹立され、当申請者らによってC3H/Heに戻し交配して維持しているp53遺伝子欠失マウスと、klothoマウス(遺伝的背景はC3H/He)とを交配し、まず両者ヘテロのマウスを得る。尚、klothoマウスのホモは妊孕性がないが、最近、離乳直後の食餌中のリン含量を減らすことによりklotho遺伝子の発現が誘導され、妊孕性が回復する(Morishima K. et al. J Nutr. 131:3182-3188,2001)との報告がなされたので、これを取り込むことも視野に入れた、両者のホモ化をめざす。

研究成果

• [文献書誌] Hirabayashi Y. et al.: "Serial Transplantation of p53-deficient hemopoictic progenitor cells to assess their infinite growth"Experimental Biology and Medicine. (In press). (2002)
• [文献書誌] Yoshida K. et al.: "Cell Leukemia : p53 Deficiency-mediated Suppression of the Leukemic Differentiation in C3H/He Myeloid Leukemia"Leukemia Research. (In press). (2002)
• [文献書誌] Yoon BI. et al.: "Mechanism of action of benzene toxicity : cell cycle suppression in hematopoietic progenitor cells(CFU-GM)"Expt'l Hematol.. 29(3). 278-285 (2001)
• [文献書誌] Yoon BI. et al.: "Transgene expression of thioredoxin(trx/adf)protects against 2.3.7.8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(tcdd)-induced hematotoxicity"Arch Environ Contam Toxicol. 41. 232-236 (2001)
• [文献書誌] Yoon BI. et al.: "Hemopoietic cell kinetics after intraperitoneal single injection of 2.3.7.8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)in mice"Chemosphere. 43. 819-822 (2001)
• [文献書誌] Sai K.et al.: "Inhibition of apoptosis by pentachlorophenol in v-myc-transfected rat liver epithelial cells : relation to down-regulation of gap junctional intercellular communication"Cancer Lett. 173. 163-174 (2001)
• [文献書誌] Frith CH. et al.: "Hematopoietic System(pp.417-451) In : International Classification of Rodent Tumors : The Mouse"Ed : Mohr U. Springer-Verlag Berlin Heidelberg. 474 (2001)