研究概要 |
本年度にはRAPDより作成したプライマーでCryptosporidum Parvumの検出感度、特異性と遺伝子型の解析を行った。検出感度の結果では作成したPCRプライマーSB281,SB298とSB012が最も高い検出感度を持ち、他の常用プライマーと比べて、50倍以上の検出感度を達成した。さらに、これらプライマーで増幅したDNAのRFLP解析でC. parvumのGenotype IとGenotype IIをタイピングすることができた。 高感度の遺伝子型タイピング方法を開発するため、地域や宿主由来の異なるC. parvum 41株の糖蛋白遺伝子(Cpgp40/15)を解析した。DNAシークエンスの解析結果により、これら株にDNA多様性に富んでいる事が示された。遺伝子型Genotype IとGenotype IIの株のDNAとアミノ酸の相同性は、それぞれ73.3%から82.9%と62.4%から80.1%であり、Genotype I株の内には69.0%から85.4%と54.8%から79.2%であった。DNAシークエンスの差を利用して、41株のCpgp40/15遺伝子型をPCR-RFLPとRFLP-SSCPで解析した結果で、Genotype I株がGenotype Ia1,Ia2,IbとIeに、Genotype II株がGenotype IIa, IIbとIIcにタイピングできる事を示した。この方法によって、人由来のGenotype I株は、日本の人由来株がGenotype Ia1とIe、ネパールの人由来株がIa2、イタリアの人由来株がIbとタイピングされた。Genotype IIの株は日本の牛由来株がGenotype IIa、イタリアの牛由来株がIIb、イタリアの羊由来株がIICとタイピングされた。 以上の結果は、作成した高感度プライマーが環境水からC. parvumを検出・同定、及び遺伝子型の解析に利用する事可能であり、Cpgp40/15遺伝子のPCR-RFLP-SSCPの解析が最もhigh resolutionであり、いままでの方法でタイプングができない遺伝子型が明らかにできたことを示した。このような方法によって、C. parvumの遺伝子型の多様性が把握可能で、これを応用する事によって、感染源や汚染環境から分離株の遺伝子型分類・同定、感染経路あるいは感染源の推定への応用などが期待される。
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