研究概要 |
本研究は従来のPCR-RFLP (PCR-Restriction Fragment Length Polymorphism)とPCR-SSCP (PCR-Single Strand Conformational Polymorphism)を組み合わせた方法を用いて、PCR断片の遺伝子多型の解析によりCryptosporidium parvumの株間の相違を調べた。高感度の遺伝子型ダイピング方法を開発するため、地域(日本、イタリア、ネパール)や宿主(人、牛、羊)由来の異なるC. parvum41株の糖蛋白遺伝子(Cpgp40/15)を解析した。DNAシークエンスの解析結果により、これら株のDM多型性に富んでいる事が示された。41株のCpgp40/15遺伝子型をPCR-RFLPとRFLP-SSCPで解析した結果、従来のGenotype IとGenotype IIにタイピングすることができた。また、Genotype I株がGenotype Ia1,Ia2,Ib及びIeに、Genotype II株がGenotype IIa, IIb及びIIcにタイピングできた。この方法によって、日本の人由来株がGenotype Ia1及びIe、ネパールの人由来株がIa2、イタリアの人由来株がIbにタイピングされた。また、Genotype IIの株は、日本の牛由来株がGenotype IIa、イタリアの牛由来株がIIb、イタリアの羊由来株がIIcにタイピングされた。Cpgp40/15遺伝子型は地域や宿主の由来と関連があった。 さらに、環境中のクリプトスポリジウム原虫を高感度で検出することは困難であるため、高感度で高い特異性を持つPCRプライマーの開発に着手した。検出感度ではプライマーSB281,SB298及びSB012が最も高い感度を持ち、他の常用プライマーと比べて、50倍以上の検出感度を達成した。さらに、これらのプライマーで増幅したDNAのRFLP解析で、C.parvumのGenotype IとGenotype IIをタイピングすることができた。 以上の結果は、作成した高感度プライマーによって環境水からのC.parvumの検出・同定、及び遺伝子型の解析が可能であることを示している。また、Cpgp40/15遺伝子のPCR-RFLP-SSCPの解析が最もhigh resolutionであり、いままでの方法でタイピングができない遺伝子型が明らかにできた。この方法によって、C.parvum遺伝子型の多型性が把握でき、これを応用する事によって、感染源や汚染環境からの分離株の感染経路あるいは感染源の推定が可能になることが期待される。
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