研究概要 |
マクロファージをLPSまたはIFN-γ刺激で刺激すると、IP-10ケモカインが発現するが、これらのIP-10の遺伝子発現をマンソン裂頭条虫擬充尾虫の排泄・分泌物質(ES)は抑制した。しかし、IRF-1の発現は抑制されなかった。IP-10はLPS刺激ではTLR4の細胞質領域が会合するMyD88非依存性経路でIFN-βの産生を介して発現するが、ESはIFN-βの発現を抑制するだけでなく、IFN-β刺激によるIP-10遺伝子の発現も抑制することがRT-PCRで認められた。そして、Western blotでLPS刺激による3時間後のSTAT1 Tyr701のリン酸化はESによって阻害された。一方、IFN-γ刺激によるSTAT1 Tyr701のリン酸化はESによって阻害されなかった。ゲルシフトアッセイでIFN-γ,IFN-β刺激によるSTAT1のDNA結合活性を検討したが抑制されておらず、IFN-β刺激によるISGF3のDNA結合活性も抑制されていなかった。また、NF-κBの核移行も抑制されなかった。そこで、IP-10のIFN-γ,LPSによる最小応答領域である-243プロモーター・エンハンサー領域を組み込んだレポーター遺伝子を作成し、luciferase assayによってESの影響を検討したところ、いずれの刺激による活性化も抑制された。これらの結果は、ESによるIP-10の遺伝子発現抑制の機序が、STAT1、NF-κBのDNA結合活性を抑制するのではなく、IP-10プロモーターの構成的な転写活性の抑制によるものである可能性が示唆された。また、ESはLPS, IFN-γ,CpG-DNAのいずれの刺激によるiNOSの遺伝子発現も抑制し,nitrite産生も抑制した。しかし,IFN-γ刺激群では,MHC-II及びCIITAの遺伝子発現がES添加によって上昇した。
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