平成14年度はセファランチンを中心として感受性克服薬について検索した。セファランチンは主として6種類のアルカロイドからなりその他約50種の化合物を含んでいる。これらの混合物であるセファランチンが最もクロロキンの感受性を克服することがわかったがその他50種類のうち8種類のアルカロイドについて感受性克服試験を試みた。しかしセファランチンの主成分であるイソテトランドリンより効果の強いものは無かった。よってセファランチンは6種のアルカロイドに加え微量の50数種類のアルカロイドが混合されてはじめて画期的なクロロキン感受性変化をもたらすと考えられたよって臨床応用にあたって各アルカロイド単独ではなくセファランチンそのものを用いた臨床試験が必要であると思われた。セファランチンはマラリア原虫へのクロロキン蓄積を増加させることによって効果を発揮するこのことは正常細胞に対しても同様にクロロキン濃度を増加させる可能性があり、今後クロロキンとの併用における正常細胞への毒性実験が必要と考えられた。 一方、新規に日研化学によって開発されたP糖蛋白阻害剤であるN-276-5、15、17、26、27についてもクロロキン感受性変化を検討した。N-276-15がこれらの中で最も効果があることが確認されたがセファランチンに比べその効果は著しく劣っていた(第37回日米医学協力研究会寄生虫疾患専門部会日米合同会議、長崎、2002年8月にて発表)。この結果よりP糖タンパクのマラリア原虫におけるクロロキン耐性メカニズムへの関与の可能'性は少ないと考えられた。これら本研究課題による結果を受けて、今後の展開として、金沢大学薬学部により提供されたアルカロイド6種について検討予定である。
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