赤痢アメーバの脱嚢・発育の重要なモデルであるE.invadensのin vitro脱嚢系を用い、種々の阻害剤の効果を検討することにより脱嚢・発育機構の解明を行った。アクチン機能阻害剤latrunculin Aおよびjasplakinolideは脱嚢・発育を阻害したが、cytochalasin Dは意外にも、脱嚢・発育の促進作用を示した。微小管形成阻害剤oryzalinは脱嚢・発育を阻害した。カルシウムイオン(Ca^<2+>)キレート剤EGTAは脱嚢を阻害し、発育を遅延させたCa^<2+>channel blockerであるbepridil、カルモデュリン阻害剤trifluoperazineも両過程に対する阻害効果を示した。DNAポリメラーゼ阻害剤aphidicolinは両過程を阻害するとともに、細胞分裂を伴う発育過程の遺伝子発現の変化も阻害することが示唆された。情報伝達分子protein kinase C(PKC)の阻害剤staurosporine、chelerythrine、calphostin Cおよびphosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)阻害剤wortmanninにより両過程が阻害されたことから両過程へのPKCおよびPI3Kの関与が明らかなった。システインプロテアーゼ阻害剤Z-Phe-Ala-DMKおよびEST(E-64d)は濃度に依存して脱嚢・発育を阻害したが、嚢子の生存率には影響を及ぼさなかった。発育に対してもこれらの阻害剤は阻害効果を示し、脱嚢・発育への関与が示唆された。一方、プロテアソーム阻害剤lactacystin、β-lactoneおよびMG-132はいずれも脱嚢・発育を阻害せず、両過程への関与は低いことが示唆された。
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