研究課題/領域番号 |
13670258
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
藤田 修 国立感染症研究所, 獣医科学部, 研究員 (20260276)
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研究分担者 |
伊藤 亮 旭川医科大学, 寄生虫学教室, 教授 (70054020)
野崎 智義 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (60198588)
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キーワード | Echinococcus / multilocularis / 診断 / ELISA / アクチン結合タンパク質 / 細胞骨格 |
研究概要 |
ヒト多包虫症は、感染後無症状の潜伏期間が非常に長いことを特徴とし、臨床症状が現れてからの治療は困難を極める。現在著効を示す治療薬は無く、また外科的切除しか有効な治療法は無い。その為にも早期診断法・新規治療法につながる寄生虫特異的な分子、生物機構の解析が急務である。 本年度我々は多包虫組織からcDNAライブラリーを作成して、多包虫患者血清を用いてスクリーニングした。その結果、多包虫からは新規の3つを含む計8つの抗原遺伝子を獲得することができた。このうち細胞骨格に関与していると思われるアクチン結合タンパク質(actin modulator protein ; AMP)に着目し、その生化学的性状および機能について調べた。 獲得した8種の抗原遺伝子のうち、数種をglutathione S-transferase(GST)との融合蛋白として大腸菌に発現させ、精製した。さらに、診断抗原としてのAMPの有用性を確認する為に、多包虫(22検体)と他の寄生虫症患者血清〔単包虫症(23)、有鉤嚢虫症(20)、肝蛭症(10)、肺吸虫症(10)、日本住血吸虫症(20)、赤痢アメーバ症(14)〕を用いて、既知のエキノコックス抗原(cytovillin, GST)と比較してELISA法にて検討した。 その結果、AMPの感度および特異性はcytovillinに若干劣るものの、多数の多包虫症患者血清でこの抗原を認識していた。 さらに、AMPの遺伝子の全配列を現在まで報告されている様々な植物あるいは動物から分離されているアクチン結合タンパク質と比較したところ、N末端およびC末端では極めて異なるシークエンスを示したものの、このタンパク質の重要な部分(F-/G-アクチンとの結合部分)の相同性は非常に高かった。 今後このAMPの機能および幼虫組織内での局在等を検討する予定である。
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