研究概要 |
住血吸虫感染においては、虫卵の組織内沈着による虫卵周囲肉芽腫形成とそれに続いて起こる組織の線維化が主要な病因となる。この肉芽腫形成は抗原特異的CD4陽性のヘルパーT細胞およびアクセサリー細胞上のMHCクラスIIに厳密に依存している。この事から私達は特異的ヘルパーT細胞を刺激誘導する抗原およびそのエピトープに特に焦点を絞り、T細胞応答の解析をすすめてきた。これまでに主要虫卵抗原(Sm-p40),phosphoe nolpyruvate carboxykinase(Sm-PEPCK),thioredoxin peroxidase(Sm-TPx),150/166kDa(Sm-prealbumin),29kDa(Sm-GST),25kDa,19kDa 成分をT細胞抗原として特定し、いくつかについては遺伝子クローニングを行い、アミノ酸配列を決定し、その免疫学的特性を調べた。本年度は特に25kDa成分について詳細に調べた。この成分はヒト好塩基球からIL-4を誘導する虫卵成分(IPSE)として報告されたものと部分配列が100%同一であった事から、データベースのアミノ酸配列に従ってレコンビナント蛋白を作製し、免疫学的特性を調べ、ネイティブ抗原を用いた場合と比較検討した。両者ともIFN-gamma産生、特異抗体産生を促したが、全体的にC57BL/6よりもCBAマウスに強い応答が誘導された。Th2タイプのサイトカインであるIL-4,IL-5の産生はネイティブ抗原によって、C57BL/6マウスに強く認められた。抗体産生は産卵開始の時期と一致して急激に上昇した。一方、これまでの色々な結果から、それぞれのT細胞応答モジュレーションに抗原のグリカンの特性および程度が強く関連している事が推測され、この観点からも詳細な検討が重病化抑制の新規手段を開発するために必要であると考えられた。
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