研究概要 |
住血吸虫症では、産生された虫卵が組織内に沈着する事によって,特徴的な肉芽腫形成とそれに続く線維化等の後、組織障害を残し慢性疾病となる。本研究では感染マウスモデルを用いて病態の重症化に対して、抵抗性あるいは感受性マウスの免疫応答をT細胞応答及び主要抗原分子の探索に焦点をあてて詳細に解析した。マンソン住血吸虫感染では特異的CD4^+T細胞を刺激誘導させる物質が病変成立に関与すると考えられる。虫卵中のこの抗原成分を特定するため、MHC H-2ハプロタイプが異なり、病態が顕著に異なるマウスストレインから得た抗原特異的T-Tハイブリドーマおよび感染及び免疫マウスから得たヘルパーT-細胞を用いてスクリーニングを行った結果、いくつかの抗原成分が特定できた。虫卵成分中強い免疫応答を誘導する事が知られていたSm-p40に加えて、新しく特定したマンソン住血吸虫虫卵由来phosphoenolpyruvate carboxykinase(Sm-PEPCK),及びthioredoxin peroxidase (Sm-TPx-1)についてアミノ酸配列、免疫学的特性について調べた。Sm-p40はH-2^kであるCBA及びC3Hマウスにおいて顕著に強いTh1に偏った応答を促し、重い病態を惹起するのに対し、Sm-PEPCK及びSm-TPx-1は、比較的マイルドな病態を辿り、H-2^bであるC57BL/6マウスにおいて強いT細胞応答を促し、よくバランスのとれたTh1/Th2応答を誘導した。またレコンビナント蛋白ではいずれの分子によってもTh1に偏向した応答を誘導する事が判り、ネイティブ分子に伴っていると考えられる糖鎖の重要性が推測された。
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