当該研究者らは、アドレナリン作動性神経終末のドーパミンからノルアドレナリンの生成を阻害する6-hydroxydopamine(6-OHDA)投与による交感神経系遮断マウスにおいて、リステリア感染に対する抵抗性が増強することを見い出し、リステリア感染防御が交感神経系にかなりの比重で支配されている可能性が考えられることを明らかにした。本研究では、カテコラミンレセプターを介した細菌感染防御の調節機構を解析する一方、免疫系と神経系を結ぶサイトカインとして注目されているmigration inhibitory factor(MIF)の関与を生体レベルで明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。 1.アドレナリンレセプター(AR)のアンタゴニストあるいはアゴニスト投与マウスにおけるリステリア感染防御およびサイトカイン応答に対する影響を検討した結果、ARαアンタゴニストであるphentolamineやARαアゴニストであるphenylphrine投与マウスではリステリア感染防御が抑制された。また、ARαアンタゴニストマウスでは、感染防御に必須であるIFN-γやTNF-α産生応答が低下していた。 2.一方、ARβアンタゴニストやARβアゴニスト投与はリステリア感染防御やサイトカイン応答に影響を与えなかった。 これらの結果から、ARαを介して、リステリア感染防御が複雑に調節されていること、その調節にサイトカイン産生調節を介していることが示唆された。 3.リステリア感染により、感染臓器に微量のMIFが誘導された。次に、リステリア感染時に抗MIF抗体を投与すると、非致死感染では感染に全く影響は見られなかったが、致死感染に対しては防御効果が認められ、非致死感染に転換し、臓器中の菌数の低下が認められた。 これらの結果から、MIFは致死感染において病態形成因子として働くことが明らかとなった。
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