腸球菌の薬剤耐性プラスミドpMG1の接合伝達系は今まで知られていた系とは異なることが示唆されていたが、平成12年度までの研究により接合伝達時に発現が上昇する遺伝子71ORF2とこれを負に調節している75ORF4遺伝子の存在が明らかなった。これまで知られていた系においては接合伝達時に発現調節が行われるtra遺伝子は知られておらず、pMG1がユニークな接合伝達系を持っていることが支持された。また、71ORF2遺伝子については接合凝集塊の形成あるいは安定化に関与している遺伝子であることを明らかにした。これらを踏まえ、平成13年度の研究によって次のことを明らかにした。1)pMG1の全DNA塩基配列を決定することを試み約90%を決定した。2)75ORF4の発現調節を行う遺伝子を明らかにするためにtra突然変異体における75ORF4の発現を調べたところ、75ORF4の発現が恒常的になる株や完全に発現が抑制される株があった。この結果から75ORF4が正および負の調節を受けていることがわかった。3)75ORF4が接合伝達時に転写が抑制されることを平成12年度までの研究で明らかにしてきたがこの転写抑制を指標として受容菌の接合伝達における役割を明らかにすることを試みた。まず、受容菌が生きていることが接合伝達開始に必要かどうかを調べるために熱あるいは抗生物質で殺菌した受容菌を用い75ORF4の転写抑制が起こるかどうか調べた。その結果、死菌との接合伝達では転写抑制は観察されなかった。このことは接合伝達の開始に受容菌細胞表層物質のみでは不十分で、受容菌との相互作用が必要であることを示唆している。そこでTn916を用い転写抑制を起こさなくなる受容菌突然変異体の単離を試みたところ、数株転写抑制を起こさせない株が得られた。このことは供与菌との相互作用を行う遺伝子が存在することを示唆している。以上3項目について引き続き研究続けてゆく予定である
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