研究概要 |
昨年度までの,特に遊離脂肪酸がファゴソーム内結咳菌にattackする様相に関する検討により,マクロファージ(Mφ)の抗結核菌,抗M.avium complex(MAC)活性には遊離脂肪酸,特にアラキドン酸(AA)と活性窒素酸化物(RNI)との協同作用が重要であることを強く示唆する成績が得られているが,本年度は,Mφファゴソーム内でのAAの産生に関わるPhospholipase A_2(PLA_2)の性状についての検討を中心に研究を進め,概略以下のような成績が得られて来ている。(1)結核菌およびMAC菌のMφ内増殖は,quinacrine(PLA_2阻害剤)やTFMK(IV型cytosolicPLA_2[cPLA_2]阻害剤)によりenhanceされるが,manoalide(II型secretory PLA,[sPLA_2]阻害剤)では影響を受けないことからMφ内殺菌メカニズムにおけるIV型cPLA_2の関与が強く示唆された。(2)^3H-AA標識Mφに結核菌を感染させた後に培養した場合の,^3H放射活性の結核菌菌体べのtranslocationは,colchicinc(貧食阻害剤)やTFMKによって強く抑制されたが,manoalide, NDGA(lipoxygenase阻害剤)あるいはindomethacin(cyclooxygenase阻害剤)では影響を受けないことより,Mφファゴソーム膜のリン脂質より産生されたAAはPGやleukotrieneに変換されることなくファゴソーム内の結核菌にattackすること,さらに,こうした現象にはIV型cPLA_2が重要な役割を演じていることが明らかになった。(3)IFN-γ活性化マウス腹腔Mφでは,IV型cPLA_2のmRNA発現が強く認められたが,II型sPLA_2のmRNA発現は認められなかった。また,IFN-γで刺激したRAW264.7MφやJ774Mφ細胞株でも,同様な成績が得られているが,この場合V型sPLA_2のmRNA発現も強く認められることが分かった。(4)IV型cPLA_2のmRNA発現が,結核菌H37Rv株(強毒株)やH37Ra(弱毒株)の感染によって増強すると言う現象は認められないことより,IV型cPLA_2によるAA産生の制御は,post transcriptionalなメカニズムによるものと考えられる。現在,MAP kinase系を介するIV型cPLA_2の活性化とMφファゴソーム膜へのtranslocationの様相についての一連の検討を進めつつある。
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