研究概要 |
昨年度までの,遊離脂肪酸のマクロファージ(MΦ)ファゴソーム内局在結核菌へのattackのプロフィールに関する一連の検討により,(1)結核菌のMΦ内増殖はquinacrine (phospholipase A_2[PLA_2]阻害剤)やTFMK (IV型cytosolic PLA_2[cPLA_2]阻害剤)により助長されることから,MΦ内での結核菌の殺菌には,cPLA_2が重要な役割を果たすこと,(2)^3H標識アラキドン酸(^3H-AA)を取り込ませたMΦに結核菌を感染させると,^3H-AAのcPLA_2に依存性のファゴソーム内結核菌へのtranslocationが認められること,さらに,(3)IFN-γ活性化MΦではcPLA_2発現の増強が認められることなどが明らかになって来ている.本年度は,結核菌感染MΦにおけるcPLA_2の細胞内局在とMAPKによるリン酸化のプロフィールについての一連の検討を進めたが,概略以下のような成績が得られてきている.(1)抗cPLA_2抗体とpyrene標識リン脂質での二重染色を施したMΦについての螢光顕微鏡下での観察により,結核菌に感染させたマウス腹腔MΦおよびRAW264.7MΦでは,何れにおいても,cPLA_2が結核菌を取り込んだファゴソームにtranslocateしており,菌体周囲でのcPLA_2およびcPLA_2の基質であるリン脂質の局在が増強すること,(2)Western blot法による検討で,マウス腹腔MΦでは,結核菌感染後48時間で,MAPK活性依存性にcPLA_2のセリン残基のリン酸化が起こること,他方,(3)RAW264.7MΦでは結核菌に未感染の細胞でもcPLA_2のリン酸化がconstitutiveに起こっていること,(4)ATPの作用によりM.aviumに対するMΦの殺菌活性の増強が認められるが,この現象にもcPLA_2が重要な役割を演じていることなどが明らかになった.以上の成績は,結核菌やM.aviumなどの病原性抗酸菌に対するMΦの殺菌メカニズムには,cPLA_2の果たす役割が重要であるという考えを支持するものであり,今後はMAPKによるcPLA_2のリン酸化がMΦのToll-like receptorからのシグナルによりどのように制御されているのかについての詳細な検討を進める予定にしている.
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