ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ホスホリパーゼC遺伝子(plc)のプロモーター上流には3つのphased A-tracts(-66〜-40)が存在し、低温(25℃)で折れ曲がり(ベント)構造を形成する。するとplcプロモーターとRNAポリメラーゼ(RNAP)との接触領域の拡張がおこり転写が促進される。この分子機構を解明するために、phased A-tractsにウェルシュ菌RNAPαサブユニット(CpRNAPα)が結合するかどうか調べたところ、phased A-tractsにRNAPのαCTDが結合することを明らかになった。UPエレメントのminor grooveに大腸菌RNAPαCTDが結合することが知られていることから、phased A-tractsのminor grooveにCpRNAPαのαCTDが結合していると考えられた。 平成14年度は、αCTDがphascd A-tractsによる低温依存性の転写促進にどれほど貢献しているか明らかにするためにRNAポリメラーゼの再構成実験系を確立して、α2ββ'σとαNTD2ββ'σを作製しようと試みた。まずC.perfringensNCTC8237株からα、αNTD、β、β、σの各サブユニットをコードする遺伝子をそれぞれクローニングし、大腸菌の組換えタンパク質の大量発現系を用いて、各サブユニットを大量生産した。精製した各サブユニットを用いてRNAポリメラーゼを再構成してみたが、α2ββ'σ、αNTD2ββ'σともに十分な活性を得ることはできなかった。β'が不活化されていると考えられた。今後この点を注意して、再度試みる予定である。
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