研究概要 |
我々は生菌やLPSの刺激で強くリン酸化されるマクロファージ内タンパク質p65/L-Plastin (p65)を同定した。p65は免疫系細胞に特異的に発現され,Ca, calmodulin,β-actin結合ドメインを有する多機能タンパク質であり,細菌の細胞内侵入や防御系細胞の遊走・接着など,病原体と防御系の攻防の両面で重要な機能を担っていることが明らかになりつつある。今回,我々は,recombinant p65(rp65)を免疫原として高力価抗体および単クローン抗体(mAb)を調製し,菌体刺激に伴うp65の細胞内動態について検討した。rp65はpET vectorおよびBL21大腸菌株を用いて調製した。充分量のrp65でウサギを免疫し高力価抗rp65抗体を得た。この抗体はマクロファージ・リンパ球のnative rp65をシングルバンドとして検出した。また,rp65を抗原とするELISAを確立しmAbを得た。これらにより細胞内p65の検出が可能となった。 我々は菌体やLPS刺激でマクロファージの形態が変化し接着性が著明に亢進することを報告した。また,最近Brown EJらはp65のリン酸化がintegrinを介した細胞接着性を制御することを報告した。そこで細胞内p65の免疫組臓学的解析を実施した。接着性が亢進したマクロファージは接着面に対して著明に伸張し紡錘状の形態を示した。共焦点レーザー顕微鏡でp65の三次元的局在を解析すると,伸張部ではp65を含む触手状の構造物が観察された。β-actinと特異的に結合するphalloidinを用いて二重染色すると,細胞の伸張部では樹状のβ-actinファイバーが存在し,それに一致してp65が局在することが明らかにされた。p65のリン酸化を阻害するH-89存在下では接着性の亢進は抑制され,β-actin-p65の触手状構造物の伸張も抑制された。これらのことからp65が細胞接着をin situで動的に制御していること,およびp65を含む細胞骨格の再構成が感染防御上重要なであることが強く示唆された。
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