研究概要 |
本研究により我々はBartonella henselaeが血管内皮細胞の細胞増殖,接着分子発現増強,ケモカイン(IL-8,MCP-1)産生を誘導する事を見いだしてきた。これまでの検討で内皮細胞増殖因子は熱感受性の分泌蛋白,接着分子・ケモカイン誘導因子は耐熱性の菌体成分と推定されている。今回は,培養上清のperfusion chromatographyによる分画や本菌LPSを含めた菌体成分の解析を行い,それぞれの因子の同定を試みた。また,本菌による宿主細胞のアポトーシスについても検討した。 1.本菌LPSの生理学的活性 本菌LPSをphenol-water法で抽出・精製した。電気泳動にては大腸菌LPSのようなラダーパターンは認めなかったが,リムルステストでエンドトキシン活性を確認した。本菌抽出LPSによるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)のケモカイン産生増強効果は大腸菌LPSと比較し弱かった。このことは,本菌感染症では敗血症性ショックなどの重篤な全身症状を引き起こさないことと関連があるものと思われた。 2.本菌による血管内皮細胞・好中球のアポトーシス抑制 本菌の培養上清により,HUVECs・好中球のアポトーシスが抑制されることを確認した。その抑制因子を同定するため,培養上清をperfusion chromatographyにて分画し検討したところ,アポトーシス抑制効果を示すピークが認められた。一方,本菌LPSはアポトーシス抑制効果を示さなかった。 3.本菌培養上清中の血管内皮細胞増殖因子 上記と同様の手法により培養上清中の血管内皮細胞増殖活性を有する分画を得た。このピークは,アポトーシス抑制効果を示すピークとは異なるものであった。 本菌はさまざまな様式で宿主細胞の機能変化を誘導しているものと思われる。現在,培養上清中の目的とする因子を同定中である。
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