研究課題/領域番号 |
13670279
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
安田 陽子 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (70080009)
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研究分担者 |
後藤 紀久 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 室長 (10100108)
谷口 暢 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (00285199)
杤久保 邦夫 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30079991)
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キーワード | 粘膜ワクチン / 経鼻投与 / コレラ毒素Bサブユニット / 毒素原性大腸菌 / 腸管出血性大腸菌O157 / 線毛性定着因子 / 志賀毒素Bサブユニット / ホルマリン不活化菌体 |
研究概要 |
安全性の高い「組換えコレラ毒素Bサブユニット(rCTB)」を粘膜アジュバントとした粘膜ワクチン開発の一環として、依然発展途上国で高い乳児死亡率を示す毒素原性大腸菌感染症やわが国でも問題となっている腸管出血性大腸菌感染症(特に、溶血性尿毒症症候群や脳症)の予防に役立つワクチン候補を作製することを目的とした。感染・発症予防には、菌の定着を阻止する腸管分泌型IgAおよび毒素の中和抗体(腸管および血清中)を誘導することが重要である。 毒素原性大腸菌 (1)定着因子としての精製線毛(CFA/III)標品をマウスに経鼻投与すると、血清IgGと腸管IgA産生が誘導された。これらの抗体には菌体凝集活性があり、定着阻止能をもつ可能性が高い。(2)線毛標品はCaco-2細胞へ付着するが、実際に付着に関わる成分は微量のアドヘシンタンパクであることが欠失変異株の実験から明らかになった。(3)組換えアドヘシンはCaco-2細胞に結合し、そのIgG(Fab)抗体は野生株の付着を濃度依存的に阻害した。(4)組換えアドヘシンをワクチン候補としてrCTBと共にマウスに粘膜投与する実験を計画中である。 腸管出血性大腸菌O157 (1)ホルマリン不活化菌体をrCTBと共にマウスに経鼻および経口投与すると、血清IgGが誘導された。特に、経鼻投与では経口投与に比べ1/1000の菌量でより高い抗体価が得られたことから、「全菌体の経鼻投与」の有効性が示された。他の病原体への応用も期待される。(2)組換え志賀毒素Bサブユニット(rStx1B、rStx2B)の分泌産生系を作製し、精製標品を得た。(3)Stx1BをrCTBと共に経鼻投与すると、rCTBの有無に関わらず血清IgGが誘導された。(4)rStx1Bの粘膜アジュバント活性が判明した。(5)rStx2Bの経鼻投与実験は進行中である。全菌体、Stx1Bに対する粘膜IgA誘導がわずかしか見られなかった点は、ワクチン組成に工夫が必要であろう。
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