1×10^8CFUのS.typhimurium aroA変異株をBALB/cマウス腹腔内に接種すると、感染2日以内にマウスはすべて死亡した。感染18時間後では、血漿中にHMG-1を認めなかったが、24〜30時間後にピークとなった。LPS投与の実験系では、血漿HMG-1のレベルが投与16時間後から高まることが既に報告されている。これと比べ感染モデルではやや遅くHMG-1が遊離することがわかった。感染モデルでは、肝臓における血液凝固の亢進により血栓が形成され、血流が阻害されたことにより支配領域の細胞に壊死が誘導された。感染によって引き起こされるショックは肝細胞の壊死によるものであり、HMG-1は細胞壊死により血中に遊離したものと考えられる。感染実験モデルでのHMG-1の遊離とショックの誘導は相関していた。 ガラクトサミン(Ga1N)を負荷したマウスにLPSを投与するとショックが誘導される。この実験モデルのショック誘発におけるHMG-1の産生を調べた。HMG-1は正常マウス肝臓ホモジネートには多量に存在したが血漿には認められなかった。LPS投与4時間後のGa1N負荷マウスの血漿ではHMG-1を検出できなかったが、ショック死が誘導される直前の6時間後には高いレベルとなった。TNF-αをGa1N負荷マウスに投与した5時間後の血漿には微量のHMG-1を、その30分後には多量のHMG-1を検出した。血漿GOTの値もHMG-1と同様に著しく増加した。 異なるメカニズムでショックが誘導される実験系で同じような結果を得たことから、HMG-1はマクロファージによって作られるというより、壊死やアポトーシスによって死に至った細胞から遊離したものと考えられる。さらにより詳細なメカニズムを明らかにするためにモノクローナル抗体の作成を検討し、B.brevisを用いて、組換えHMG-1を分泌タンパク質として生産する系を確立した。
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