S.typhimurium aroA変異株をBALB/cマウスの腹腔内に接種する感染実験モデルでは、HMG-1の遊離時期とショック死誘導時期が相関していた。ガラクトサミン負荷マウスにLPSあるいはTNF-αを投与する実験系でも、HMG-1の産生はショック死が誘導される直前に高いレベルとなった。黒なるエンドトキシンショックの実験系で同じような結果を得たことから、HMG-1はマクロファージによって作られるというより、壊死やアポトーシスによって死に至った細胞から遊離したものと考えられた(J.Endotoxin Res.に発表および論文投稿中)。 より詳細なメカニズムを明らかにするため、組換えHMG-1の作製と精製法について検討した。B.brevisを用いて分泌タンパク質として得る生産系では、培養液中の組換えHMG-1レベルが低いため収率が少なかった。このため、エンドトキシン混入の可能性があるが、E.coli M15にpHMG-1/QE-30を導入し、組み換えHMG-1産生株を作成した。培養菌体を回収後、Niカラムを用いた精製法を確立し、現在モノクローナル抗体の作成を行なっている。 自己免疫疾患等の炎症においてHMG-1がマクロファージの活性化を促進し、炎症やプロテアーゼの活性化に関与することが報告されている。関節リウマチの実験モデルであるコラーゲン誘発関節炎をマウスに誘導したところ、炎症の発現とHMG-1の遊離に相関が認められた。関節、リウマチに対する治療効果を検討しているフラボノイドの経口投与によりプロテアーゼ(MMP-8)活性が卯制され、関節組織の破壊も抑制された。このとき組織液中のHMG-1の濃度も対照群に比べ抑制されていた。このことから、フラボノイドの経口投与はHMG-1の細胞外遊離を抑制することによりMMP-8活性化を抑えることが示唆された。このことから、HMG-1はエンドトキシンショックだけではなく、ほかの炎症にも関与し、HMG-1遊離の抑制は炎症の制御に重要であることが示唆された(論文作成中)。 今後は得られた精製組換えHMG-1の生物活性について分子的機能解析を行う予定である。
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