(1)グラム陰性菌による敗血症はエンドトキシンショックによるといわれているので、精製したS型およびR型のLPSを静脈内投与した時と大腸菌感染時について、血中LPSの消長を経時的に解析した。精製LPS投与時、R型LPSはS型LPSに比べ急速に血流から消失した。一方、大腸菌感染では高い血漿LPS濃度が持続した。このようにLPSの投与モデルと感染モデルではLPSの挙動が異なることを明らかにした。(論文1) (2)S. typhimurium aroA変異株をマウス腹腔内に接種する感染実験モデルで抗生物質ホスホマイシン(FOF)とイミペネム(IPM)の活療効果を検討した。感染1時間後の抗生物質投与は脾臓や肝臓中の菌数減少を引き起こしたことから、抗生物質の抗菌作用は感染によるショックを抑制することがわかった。(論文2) (3)感染実験モデルでHMG-1の遊離時期とショック死誘導時期が相関していたことから、ガラクトサミン感作マウスにLPSあるいはTNF-αを投与する実験系でHMG-1産生を検討した。HMG-1産生はショック死が誘導される直前(投与5.5〜6時間後)に急速に亢進した。この現象は時間依存的に推移し、肝臓におけるアポトーシス誘導と相関した。HMG-1の産生はショック死誘導の直前に高レベルとなった。また、死亡直前のガラクトサミン感作マウスから得られたHMG-1を含む血漿をガラクトサミン感作マウスに投与してもショック死を誘導しなかった。以上の知見より、HMG-1はマクロファージによって作られるというより、壊死やアポトーシスによって死に至った細胞から遊離したものと考えられる。(論文3)
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