研究代表者は血小板由来のリゾフォスファチジン酸(LPA)がジフテリア毒素レセプター/膜結合型HB-EGF前駆体(DTR/HB-EGF)の細胞外領域の切断を誘発することを見いだした。これまでに数種類の既知の膜結合型メタロプロテアーゼのドミナントネガティブフォームを発現させた細胞で、LPA誘発によるDTRの切断は阻害されなかった。 このことから、新規の膜結合型メタロプロテアーゼの関与が考えられるのでこれをクローニングし、その活性化されるメカニズムを解明するために研究を行っている。 本年度は膜型メタロプロテアーゼのクローニングを目指して、下記の3つの方法を同時に進めている。 1 DTRとアソシエートする分子からのクローニング LPA刺激で切断が起きないミュータントDTRを発現する細胞を作製し、LPAで刺激した後細胞表面特異的にケミカルクロスリンクをかける。細胞を可溶化後DTRのC末端認識抗体で免疫沈降し、共沈澱してくる分子を明らかにする。 現在、作製したミュータント細胞の可溶化条件を検討中である。 2 メタロプロテアーゼ阻害剤により濃縮される分子からのクローニング ヒドロキサム酸系のメタロプロテアーゼ阻害剤が最も効率良くDTRの切断を阻害するので、この阻害剤をカップリングしたビーズのカラムでメタロプロテアーゼをトラップし、次にHPLCで分離精製後シーケンスを行う。現在は阻害剤を失活させないカップリング法を検討中である。 3 DTRの切断を阻害するモノクローナル抗体からのクローニング 細胞膜フラクションでマウスを感作して、膜型メタロプロテアーゼに対するモノクローナル抗体を作製する。LPA刺激によるDTRの切断を阻害することを指標にしてスクリーニングを行う。阻害抗体が得られたら、細胞の可溶化溶液を免疫沈降法によりメタロプロテアーゼを濃縮する。現在、抗体を作製中である。
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