研究代表者は血小板由来のリゾフォスフアチジン酸(LPA)がジフテリア毒素レセプター/膜結合型HB-EGF前駆体(DTR/HB-EGF)の細胞外領域の切断を誘発することを見い出した。これまでに数種類の既知の膜結合型メタロプロテアーゼのドミナントネガティブフォームを発現させた細胞で、LPA誘発によるDTRの切断は阻害されなかった。このことから、新規の膜結合型メタロプロテアーゼの関与が示唆されたのでこれをクローニングし、その活性化されるメカニズムを解明するために研究を行った。 研究期間中は下記の3方向から研究を進めた。 1 DTRとアソシエートする分子からのクローニング 2 メタロプロテアーゼ阻害剤により濃縮される分子からのクローニング 3 DTRの切断を阻害するモノクローナル抗体からのクローニング 残念ながら、研究課題の期間中にLPA刺激によって起こるDTRの切断に関与するブロテァーゼのクローニングには至らなかった。ここに当初の計画に於ける見通しの甘さが露呈した格好となった。しかし、現在行っているLPA刺激依存的にDTRとアソシエーションする分子の同定により、プロテアーゼが明らかになることを期待している。一方で、新規のプロテアーゼのDTRの切断機構の解明のために行った予備実験が、予想以上の面白い結果となった。すなわち、DTRはTPA、LPA、及びアニソマイシン等に代表されるようなストレスによっても切断が誘導されることが明らかになった。またストレスによるDTRの切断はp38MAPKを介し、LPAおよびTPAの時とは異なるシグナル伝達経路が示唆された。今後の研究の展開としては、幅広い刺激を想定し、またプロテアーゼの同定には用いる細胞もよく吟味する必要があるものと思われる。
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