研究概要 |
古くから菌体の非感染性成分に免疫を賦活化する因子(アジュバント)が存在することが知られていたが、その実体はこれまで不明であった。微生物およびその構成成分は、一般にリンパ球ではなくマクロファージ/樹状細胞を標的とする。これらの細胞は、微生物にのみ存在する分子パターンを認識し、サイトカイン産生などを介して異物侵入を生体にすみやかに伝達する。すなわち、微生物成分には固有のレセプターが存在する。本研究では、我々が世界に先駆けて発見したM.fermentansモジュリンM161抗原が、近年、微生物構成成分のシグナリングレセプターとして同定されたToll-like receptor(TLR)familyのなかのTLR2を介して細胞内にシグナルを伝達することを明らかとした。その結果、単球、マクロファージからIL-12p40,IL-1β,TNF-αなどのサイトカインが産生され、また、樹状細胞では、IL-12p40の産生誘導とともに、副刺激分子の発現が誘導され樹状細胞を成熟化させることが示された。更に、Ml61抗原は補体活性化能を有するため、補体レセプターCR3を介して細胞内に取り込まれ、TLR2からのシグナルを修飾することを明らかにした。M161抗原の機能発現には、N末リピド構造が重要であることを種々のリコンビナントM161抗原を用いた実験より明らかにした。また、ヒトTLR2に対するモノクローナル抗体を2種類作製し、種々の細胞での蛋白レベルでの発現を調べることを可能とした。その結果、TLR2は単球では細胞表面に高レベルで発現するが、マクロファージ、樹状細胞ではメッセージレベルで発現しているにもかかわらず蛋白レベルでの発現が非常に少ないことが明らかとなった。更にモノクローナル抗体による阻害実験から、TLR2のリガンド認識部位が個々のリガンドで異なることを示した。
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